修了生インタビュー
星野 由季菜 | |
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大学・学部出身
研究分野
経歴
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インタビュアー | |
加藤 優弥 |
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イントロ
加藤:星野さん。ご無沙汰しております。以前、水戸のゲストハウスで偶然お会いしてからしばらく経ちますが、本日もあの時のように色々お話をお伺いできればと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。 |
星野:お久しぶりです、加藤さん。こちらこそ、よろしくお願いいたします。 |
星野さんが大学院に進学されたきっかけ
加藤:まず、星野さんが大学院に進学された理由を教えてください。 |
星野:私、学部時代は茨城大学にいたのですが、在学中に「西塩子の回り舞台」という地元の祭りのボランティアに従事していました。長らくその祭りは行われてこなかったのですが、半世紀ぶりにその祭りを復活させ、さらに祭りの司会者も務めました。私の中でその経験が楽しかった記憶として残っており、「常陸大宮で役に立ちたい、仕事をしたい」という意識が芽生え出しました。そこで、行政以外で町づくりに携わることを目指し就職活動をしたのですが、あまりフィットするところが見つからなかった時に、大学の先生から大学院への進学を勧めてくださったのがきっかけです。 |
加藤:そうだったのですね。では、なぜ茨城大学ではなく、筑波大学の大学院に進学されたのですか?星野さんの研究テーマと近い先生がいらっしゃったのでしょうか? |
星野:当時、前川啓治先生という文化人類学の先生がいらっしゃいました。 |
加藤:前川先生ですね!今は退官されましたが、私も学部時代に「文化・開発論」という授業を受けましたので存じ上げております。前川先生のどのような点が星野さんの関心と近かったのでしょう? |
星野:前川先生の研究は学問と町づくりを実践的におこなっており、そこに共感しました。 |
加藤:「実践的」というと、どういう意味でしょうか? |
星野:端的にいうと、コミュニティを作りながらということになります。単純に文化人類学という学問をするだけでなく、それと並行してコミュニティも形成していくところに前川先生の研究スタイルがありました。 |
加藤:それをお伺いすると、確かに星野さんが学部時代にされていたボランティア活動も、お祭りを復活させるというのはまさにコミュニティ作りと近い部分を感じますね。ありがとうございます。 |
星野さんの院生生活について
加藤:では、次に大学院時代にどのようなことに取り組まれていたのか、お聞かせください。 |
星野:そうですね。たくさんあるんですけど、例えば、「西塩子の回り舞台」のお手伝いに約2か月行ったりだとか、人前に立つ練習としてプレゼンコンペに出場したりとかしましたね。 |
加藤:プレゼンコンペというと? |
星野:今あるかどうかわかりませんが、私が在学していた当時は、学生プレゼンバトルというものがありまして、筑波大学の学生が自分の研究の魅力をプレゼンして、その分かりやすさを競うコンテストに私は参加しました。最終的には決勝まで進み、学園祭で発表して優勝することもできました。 |
加藤:それはすごいですね!国際公共政策の先輩で全学一位になられた方がいらっしゃるなんて、誇らしいです。 |
星野:ありがとうございます。ほかにも、人材系の企業でインターンをして、地域とそこにすむ人が元気になれるように研修を受けたりしました。この点は、あとで今の私の今の仕事にも繋がってくるので、また後で話しますね。 |
加藤:ありがとうございます。本当にいろいろ活動されていてアクティブですね。私は、目の前に降ってくる課題の山に対処することで今はもう精一杯で、他の活動などに手を付けることもできません。相当お忙しい日々を過ごしていたのだろうと想像します。話を変えまして、修士論文ではどのような研究をされたのですか? |
星野:学部時代からずっと継続して関心のあった「西塩子の回り舞台」を参与観察して修士論文を執筆しました。そのお祭りは、現在約3年に1回開催されているのですが、先ほども説明した通り、祭りの伝統が途絶えていたところ、最近復活したものなんですよね。修士論文では、「どのように復活させたのか。そして祭りにどのような意味づけをして地域の活性化に活用していったのか」などを問いとして研究をしました。 |
加藤:その結論としては、どのようなものになったのでしょうか? |
星野:はい、「西塩子の回り舞台」は意図的に復活させられたものであり、結果的に人と人のつながりも意図的に復活させることに繋がったということがわかりました。 |
加藤:とすると、前川先生の研究スタイルである、コミュニティ作りとやはり関係がありそうですね。 |
星野:そうですね。ただ、修士論文を執筆するという作業は大変でした。やはり長い期間、間近でずっとその祭りを見てきたので、書きたいことがたくさんあったんですよね。それを論文としてまとめるという作業に苦しみましたが、前川先生が温かく見守って指導をして下さりました。 |
加藤:修士論文を執筆するにあたって、先生の存在は欠かせないですよね。もし星野さんが自分の書いた修士論文を採点するとすれば何点ぐらいになりますか? |
星野:そうですね。7割ですかね。やっぱり、修士課程を通して一生懸命書いたものですので。ただ、締め切りギリギリにあわてて提出したのは、ヒヤヒヤしましたね。 |
加藤:ギリギリというと、何時間前だったんでしょう? |
星野:30分前ですね。 |
加藤:それは、確かにギリギリですね。 |
星野:そうですね。仲の良かった同期がいたんですけれども、修士論文提出前にみんなで大慌てでした。でも、研究やプライベートのことについて悩み相談をしたりだとか、研究室でピザパーティーをしたりだとか、充実していました。 |
加藤:やっぱり、院生になると、研究室の友人との付き合いに救われる場面が多いですよね。関連して、筑波大学の学生の特徴について教えていただけますか。 |
星野:強みとしては、多様な価値観を受容できる人が多いと思います。加えて、課題設定が得意な学生も多いですよね。あと、行動力もある。ただ、つくばという非常に閉鎖的な環境はこの大学の短所です。街が学生だけで完結していて社会人と接する機会がないので、つくばという土地は行動力のない人にとっては辛い環境かもしれません。 |
加藤:そうですよね。私の周りの友人を見ていても、自分から情報を掴んで東京に出てインターンをし、社会人との繋がりを求めている人はすぐに複数人思い当たります。 |
大学院修了後の星野さんについて
加藤:星野さんは、修士課程に在学中どのように就職活動をされたのですか? |
星野:私は、他の多くの方がされる就職活動とは全く別の経路で就職先を決めました。 |
加藤:というと、どのような経路なのでしょう。 |
星野:当時筑波大学には、逆求人セミナーというものがありました。通常、就職活動では学生が企業を調べて面接するという手順を踏みますが、逆求人セミナーでは学生がプレゼンしているところに、企業の人事が足を運び採用するという手順をとります。私は、プレゼンコンテストに出た甲斐もあり、人前に立つのが得意でしたので、2社から内定を頂戴することができました。 |
加藤:星野さんのプレゼンスキルは素晴らしいですね。また、そのような就職活動が世の中に存在するとは知りませんでした。私自身も参考になります。逆求人セミナーで就職先を掴んでから辞めて、常陸大宮市地域おこし協力隊として2023年7月末まで活動したという理解であっていますか。 |
星野:はいそうですね。3年間は、最初の就職先に勤めたのですが、Uターンして自分の地元のために時間を使いたいと考えるようになりました。現在は約2年半勤めた地域おこし協力隊を退任し、地元を盛り上げようと設立した方から継業したまちむすび合同会社の代表として活動をしています。 |
加藤:そうなんですね。具体的にどのような活動をされているのでしょうか。 |
星野:主に2つあります。1つ目は茨城県内の中学生を対象にキャリア教育を提供しています。例えば、職業人やキャリアコンサルタントの学校への派遣や、私自身もコーチング技術を学び、自己肯定感向上に関わる資格を取得したので子供たちの前に立つこともあります。常陸大宮市の子供たちは、自己肯定感が低い傾向にあるということを市内の教育関係者より聞いたので、それを改善したいと思っています。2つ目が、企業を対象に副業人材を活用した地位活性化プロジェクトのサポートやコミュニケーションセミナーなどをしています。 |
加藤:地域おこし協力隊員の上に、会社の活動まで並行してしまわれるとは、星野さんのパワー、強すぎます。そのモチベーションはどこから来ているんですか? |
星野:私は、「常陸大宮市に希望溢れる人を増やしたい、そういうプレイヤーになりたい」という思いがあります。祭りの復興もそうですし、中学生へのキャリア教育にもそのような意味が背景にはありますね。 |
加藤:そうなんですね。目的意識がはっきりしてていいですね。私も目標を自分で設定するように試みます!ところで、星野さんの将来の夢は何ですか? |
星野:うーん、難しいですね。ですが、思い返してみれば私の夢はいま一つ叶っている状態です。もともと、自分の大切な人に囲まれたいという思いで、地元の常陸大宮市に帰ってきました。そういう意味では、いまそのような人と繋がれているので、幸せですね。 |
加藤:今日、星野さんのお話を一通りお伺いして、「つながり」や「結ぶ」というのがキーワードであるように感じました。祭りを通して地域の「つながり」を取り戻し、まち「むすび」合同会社での活動など、人と人との関係をすごく重視されているんですね。 |
星野:言われてみれば、そうですね。 |
加藤:修士論文が70点だったとのことですが、現在の充実度は何点になりますでしょうか? |
星野:充実度では満点ですね。 |
加藤:いや、本当にそうですねよ。ありがとうございます。 |
国際公共政策学位プログラムを目指すみなさんへ
加藤:このインタビューを読むだろう在校生や将来の後輩たちにむけて何かあればよろしくお願いいたします。 |
星野:私の先生が仰っていたことに、「アイデアだけでは価値はない」という言葉があります。どういうことかというと、アイデアを形にして実践しなさいということです。つまり、行動あるのみです!やりたいことをやり尽くす学生生活にするといいと思います。 |
加藤:私も全力を尽くして学生生活をおくります!今日はありがとうございました。 |
星野:こちらこそ、ありがとうございました。 |